【文春記者】

 

2月25日(木)
皆さんこんにちは。
今日の記事
取材に王道はない。記者はひたすら実直に汗をかいている

厳選されたプランだけが記事として世に出ることを許される(C)日刊ゲンダイ

厳選されたプランだけが記事として世に出ることを許される

 いまや週刊文春編集部は活気づいて、勢いがある。短期的には編集長の復帰、運も味方したと前回までに書いたが、そもそも根底にあるのは編集部員の不断の切磋琢磨だ。
 新谷編集長の2012年のフジサンケイフォーラムでの講演を引用しよう。
〈現在、文春には専属契約の記者を含めて58人のスタッフが在籍しています。それが特集班、セクション班、グラビア班に分かれており、特集班が一番大きく40人ほどいます。特集班では毎週木曜日のプラン会議において、各記者に5本のネタ提出を義務づけています。つまり毎週200本ほどのネタからその週のラインナップを選び、取材体制を決めるのが編集長の大切な仕事です〉
 ニュースを扱う特集班からは毎週200本、デスクや編集長自らも持ち寄るので、毎週合計250本のプランが集まり、そのなかからその週にスタートするものが選ばれる。ニュース性の高いスクープ記事もあれば、じっくり読ませる企画物もあり、さまざまなジャンルのなかから厳選されるため、求められるレベルは非常に高い。
私の経験からいうと一番頭を悩ませるのがこのネタ集めだ。木曜日の会議の前が休日となっているが、その日漫然としていたら、ネタ5本を集めるなど到底無理だ。「まだ誰も知らない面白いニュース」という暗黙のルールがあるため、常日頃ネットワークを広げアンテナを張っていないと簡単には情報は入ってこない。

 まずはプランありき。プランが通らなければやりたい記事も書けないし、記者としての自信を失う。私も「週刊文春」に入りたてのころ、「仰天するようなプランを出せ」と何度も叱咤され、その都度落ち込んだり、悔しさをバネに発奮したりしたものだ。同じようなニュースでもどんな切り口を見つけたら新鮮になるか、徹夜で苦悶した。会議前日は緊張で眠れなかったこともたびたびあった。準備万端整えて会議に臨んでも打ちのめされることも多く、厳しいコンペでふるいにかけられるのだから、残ったプランは面白いに決まっている。
だがプラン会議は第一関門でしかなく、はたしてそれが記事として着地するのかは別問題。刻一刻とニュースの情勢が変わるなかで、突発的な関心事があればそっちに動くし、締め切り当日までどうなるかは分からない。いざ取材を進めてみたら、聞いていた話とは違っていて撤収ということもある。余談になるが「週刊文春」は最初の見立てが違っていたら潔く引くという姿勢があり、イケイケで突き進むという週刊誌のイメージとは真逆の慎重さがあることも付け加えておきたい。
「文春は優秀な人の集まりなんですよね」と聞かれることもあるが、私はそうは思わない。記者自身がそう思ったら愚かだとさえ思う。しかし私は「記者は本当に真面目だ」と言う。取材に王道はない。ひたすら実直に、汗をかいているのだ。
(『週刊文春』編 おわり)

中村竜太郎

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中村竜太郎
ジャーナリスト
1964年生まれ。大学卒業後、会社員を経て、95年から週刊文春で勤務。政治から芸能まで幅広いニュースを担当し、「NHKプロデューサー巨額横領事件」(04年)、「シャブ&ASKA」(14年)など数々のスクープを飛ばす。「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」では歴代最多、3度の大賞を受賞。2014年末に独立し、現在は月刊文藝春秋などで執筆中。フジテレビ「みんなのニュース」のレギュラーコメンテーター。
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