【弧狼の血】

5月26日(土)

皆さんこんにちは。

九州が梅雨入り

鬱陶しい時期です

今日の記事

役所広司はええとして

松阪桃李はあかんやろ

70年代のやくざ映画は下ネタゼリフも小気味良かったが…

73年に立て続けに封切られた「仁義なき戦い」シリーズは問答無用だし、75年の「県警対組織暴力」も実によく出来ていて、DVDを見直してたら、夜が明けてしまっていた。“実録ヤクザ路線”の役者たちがそのまま、片や刑事役、片やヤクザ役と振り分けられて出演しているだけなのに、でも、最後まで飽きさせないのが不思議。監督は深作欣二だが、話が断然オモロいのは鬼才・笠原和夫の脚本によるところが絶大だ。

「仁義――」でヤクザの親分だった菅原文太が今度は県警の刑事となってヤクザと対峙していた。

「おまえら、広谷ンとこのモタレ(チンピラ)じゃろう。殴り込みか! どいつもこいつも鼻血のたまったツラしとってから、そがにイキりたいいうんじゃったら死んでこい! その方が掃除が早いけん! 2課の久能じゃ! バタバタしよるとコッパ食らわしちゃるんど」と文太兄ィ、ヤクザサングラスをかけても十分決まっていた。

あの山守組の親分、金子信雄も今度は市会議員に成り上がり、「ほいでの、夕べ、わしらがパトカー借りたんは新聞に黙っとってくれぃ、のう、いっぺん芸者でもあげて飲ますちゃるけ」なんて。そしたら、池玲子も丸裸になって「いやー、いやッ、もう……死んじゃう!」と体当たりでセックス。相手はもちろん若衆頭の松方弘樹。

「おお、死ね、死ね、オメコがシビれて立てんようにしちゃるけんの!」とご両者、猛獣のようにのたうち回っていた。そんな乱れ放題のベッドシーンもどこか画面に品格があった。山形生まれの成田三樹夫も「そこら、あんじょう考えたっておくんなはれや。殴り込みにきたやつらのメンはよう覚えとりまっさかい」と大阪弁は最高だ。

そして、川谷拓三も狂犬のようにほえまくっていた。文太刑事の眼前で「おどれら、あっちの組から袖の下の税金取っとるそうじゃないの? いっぺんその汚れたケツ洗ったろうかい」と。70年代の笠原和夫の「やくざ映画」の脚本は一言一句に味があった。どんな下ネタゼリフも小気味よかった。

でも、今公開中の「孤狼の血」は耳障りなセリフばかりで、

「警察じゃけぇ何をしてもええんじゃ!」

とわざとらしく、ウソっぽい悪徳刑事にしか見えない役所広司のあの演技演技した下品さがどうにも理解できなかった。

彼はなぜあんなに悪ぶらないと生きられないのか、その理由も知らされないまま死んだので仕方ないが、無理に無理を重ねて芝居してるふうにしか見えず、県警からもヤクザからも文句を言われそうな、モドキ映画に見えた。

井筒和幸
井筒和幸  映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

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