【処世術】

1月11日(土)

皆さんこんにちは

今日の記事

一般のサラリーマンの仕事でも言えること

ヤクザがやっている「他人の風下に立たない」心理術の極意

公開日: 更新日:
篠田建市(司忍)6代目山口組組長(C)日刊ゲンダイ
篠田建市(司忍)6代目山口組組長(C)

拡大する

 山口組の分裂抗争が激化している。ヤクザ同士は直接的な実力行使もさることながら、互いのメンツを守るため心理術という目に見えない部分での綱引きも激しい。もっとも、この心理術に関してはビジネスの現場でも参考になるかもしれない。「ヤクザ式 図太く生きる心理術」の著者・向谷匡史氏に聞いた――。

「一般市民は『他人からどう思われるか』という思考で行動します。一方、ヤクザは『他人にどう思わせるか』が行動の柱になります。いわば自己プロデュースということでしょう。彼らが威圧するのは、図太く見える態度であり、どうして図太く見せようとするのかというと、図太い人間は一目置かれることを熟知しているからなのです」

ヤクザを美化することは断じてあってはならないが、図太く見せる演出術なら会社組織でも使えるだろう。

■ヤクザは幹部になるほど遅刻する

サラリーマン社会において遅刻は厳禁。数分の遅れで信用を一気に失墜させることもある。ヤクザ社会も末端では時間厳守が絶対。ところが、親分は逆。わざと到着時間を遅らせる演出をする。

「ヤクザの義理掛け(葬儀)などでよく見られる光景です。政治家のパーティーも同じで、大物ほど遅れて来て、悪びれずに堂々とスピーチすると、“公務多忙”を理由に途中退席します」

これを下っ端がやるとひんしゅくを買うだけだが、ヤクザの親分がやれば、「相手は大物だし、忙しいのに駆けつけてくれた」という評価につながる。

■二つ返事でアポを受けない

ヤクザは相手の風下に立つことを嫌う。アポイントメントひとつでも自分が主導権を握ろうとする。

「私が週刊誌の記者をしていた頃も、取材のアポの段階から彼らは違っていました。彼らは月曜日の予定が空いていたとしても、『その日はちょっと』といったんは断る。二つ返事でOKすると、相手に軽く見られてしまうからなのです」

都合が悪いと断られ続けると、頼む側は最後は「そこを何とか」と懇願口調になってしまう。そして会う際は「お忙しいところ……」とまずは頭を下げるハメになる。

■自分からは名刺を出さない

一度風下に立つと、それをひっくり返すのは容易ではない。

「名刺を差し出すのは力関係において下の者に決まっています。仮に対等の関係にあれば、ヤクザ同士は相撲の立ち合いのように呼吸を合わせて同時に差し出します。一方、都会的な若手のN組長に取材したときも名刺は後出しでした。ただ、30分後に取材が終わった別れ際、『じゃ、また』と先に握手を求められた。あとで考えてみると、握手は相手に対する強要であり、主導権を握る行為なのです」

当然ながら、握手を受ける側は「次もよろしく」とまた頭を下げる立場になる。

■顔が広いと相手に錯覚させる

サラリーマン社会では、誰それを知っているということをやたらと自慢する人がいる。むしろ自分に自信がない人ほど有名人とつながりがあると吹聴したがるものだ。

「関東のY幹部を取材したときのこと、関西の暴力団組織の跡目が話題になり、こちらが『次は若頭のQでしょうね』と水を向けると、Y幹部は『Qさん、若い衆に人気があるからね』とさりげなく“さん付け”で呼んだのです」

向谷氏はそのとき、「あの大物の若頭とも付き合いがあるのか?」と勝手に想像して、Y幹部も同じような実力者なのかと無意識に刷り込まれたという。ヤクザ社会は基本的には「〇代目」「代行」「本部長」など役職名で相手を呼ぶ。企業なら「〇社長」といった具合だ。社長をさん付けした時点でインパクトがある。

■会話の腰を折ってペースを惑わす

 同じ課のメンバーが集まって販促の議論に熱が入る。メンバーのA君が自説を気持ちよさそうに話し、周囲も意見に引きずられそうになる。このままではA君の手柄だ。

「図太い処し方は、決して難しいものではありません。相手の話を最後まで聞かず、『ちょっと待ってください』と異を挟めばいいだけです」

 借金の取り立てをするヤクザは、「月末までには銀行の融資が……」という債務者に向かって「つべこべ言わずに、返済せんかい」と話の腰を折る。黙って聞いてしまうと、「待ってほしい」という相手のペースに乗ってしまうからだ。相手が黙ったところで、「で、銀行の融資というのは……」と主導権を握り返せばいい。

■譲歩していると見せかける

100万円の借金を頼むとき、「無利子、無担保、私の信用で100万円を貸してほしい」と言って貸してくれる人はまずいない。ヤクザはこんな借り方はしない。まず最初に「300万円ほど」と無理な金額をぶつける。相手が「それは……」と尻込みすれば、「いくらなら?」と畳みかけ、「100万円くらいなら」という言葉を引き出す。
人間心理とは不思議なもので、一度イエスと言ってしまうと、「返済はしばらく待ってくれ」と言われても、ノーを言いづらくなる。最初に小さなイエスを言わせて、イエスの連続に持ち込むわけだ。

■「今回だけ」をリフレインする

ヤクザがものを頼むとき、「今回だけ顔を立ててくれないか」という丁寧な言い方をする。もちろん、「今回だけ」はエンドレスで続くのだが、相手に「今回限りだから仕方ない」という口実を与える手法だ。
「いっぺんだけ頼まれてくれないか」「最後にひとつだけ」という別バージョンもある。ビジネスマンもやり手の営業マンは「一度だけでいいですから商品の説明をさせてください」というゴリ押しをする。

■窮地に立ったら大声を出す

それでも断られたら頭の利くヤクザは次にどう行動するのか。答えは単純で「大声を出す」。

周囲に聞こえる大声で「こんだけ頼んでも力をお借りできないのですか!」とやると、相手は本能的にトラブルを避けようとする。自分は少しも悪くないのに、周囲には意地悪している人とみなされるからだ。

クレーマーに絡まれたコンビニ店員も「すみません、すみません」ではなく、「これだけ謝ってもお帰り願えないのですか!」と堂々と大声を張り上げたらいい。たとえ店側に落ち度があっても、被害者側になれる。

「組織でリーダーシップを張るには、心理術にたけていなければなりません。どの世界にも言えることですが、トップに立つ者はその分野に秀でています。とどのつまり、高倉健ではありませんが、歩き方、服装、駅でどう立っているかまで自分の姿を俯瞰して見なくてはいけません。最初に『ヤクザは相手にどう思わせるのかを考える』と言いましたが、有能なビジネスマンも同じです。有能だから切れ者に見えるのではなく、切れ者の態度を取るから相手は有能だと錯覚する。一目置かれれば、商談でも風上に立てます」

これぐらいの図太さがなければ、今の世の中は生きていけない。

本日の逸品
ひらめの薄造り
IMG_2681