新型コロナウイルスのPCR検査キットの法人向け販売開始で物議を醸していた楽天が、一転して一時的に販売代理を見合わせると発表した。通販サイト「楽天市場」の出店者負担による送料無料化の一律実施も断念する騒ぎもあったが、三木谷浩史会長兼社長(55)率いる楽天に何が起きているのか。

楽天が4月20日に販売を開始したPCR検査キットは、企業が社員向けに使うことなどを想定したものだが、医療行為ではないため、感染の有無を確定させる診断には使えない。このため、検査結果について医療機関に問い合わせが相次ぎ混乱を招く懸念や、実際には陽性なのに陰性という誤った結果が出た場合、感染が拡大するリスクもあると批判されていた。

楽天側は販売見合わせについて、同社の出資先で検査キットを開発したジェネシスヘルスケアの取締役会で経営体制の変更が決議されたためとしている。同社は28日付で代表取締役が辞任した。

辞任した代表取締役をめぐっては、文春オンラインが経歴詐称疑惑を報じていた。

ジェネシス社は、今回の人事は、一部報道の内容と関係ないと強調している。ではなぜ辞任したのか。同社広報担当者は「もともとPCR検査キットは医療従事者への提供が主な目的だった。楽天側の働きかけでターゲットを法人向けに範囲を広げたが、結果的にそれが混乱を招いてしまった。今回の辞任は混乱を招いたことが理由になる」と説明した。

先を急いだ楽天が想定を超えた混乱を招いたのか。雑誌「経済界」編集局長の関慎夫氏は、「PCR検査キット一件は、コロナ禍に危機感を示す三木谷氏の思いが強く出た施策と見ることができるが、スピード感に周囲が付いていけていない」と指摘する。

楽天市場をめぐっても、出店者側の負担で送料を無料にする措置に批判の声が上がった。三木谷氏は「何が何でもやる」と強行する意向を示したが、公正取引委員会が「優越的地位の乱用」にあたる疑いがあるとして緊急停止命令を出すよう東京地裁に申し立てるに至り、一律導入は見送られた。

新規参入した携帯電話ビジネスでも、幹部社員が相次いで退社したことが話題となった。

前出の関氏は「世間から大手企業とみられていても、楽天はまだベンチャー企業だ。体制が盤石だと言い切れない一方で、止まっていてはアマゾンなどに勝てない。迷走を思わせる動きは楽天なりの試行錯誤ということだろう」と分析する。そのうえで、「参謀の役割を担う三木谷氏の右腕といえる人材の姿が見えてこない」と問題点を指摘した。