【自衛隊感染者ゼロ】

5月19日(火)

皆さんこんにちは。

今日の記事

徹底的に指導され実行されてる

頭の下がる思いだ。

なぜ自衛隊から感染者は出なかったのか 

新型コロナウイルスの世界中への感染拡大はピークを過ぎつつあるとの見方があるが、少し気を抜くとあっという間に感染者が広がるのがこのウイルスの恐ろしいところだ。そんなウイルスの日本での感染拡大初期に最も注目を集めたのは、クルーズ船、ダイヤモンド・プリンセス号での感染蔓延と、同船に災害派遣され活動を続けながら1人の感染者も出さなかった自衛隊。客船という閉鎖空間の中でいったいどうやって感染を防いだのか。

英国船籍で米国のクルーズ会社が運航するダイヤモンド・プリンセス号(ダ号、11万5875総トン)は、3711人の乗員乗客を乗せ、1月20日に横浜港を出港した。鹿児島、香港、ベトナム、台湾、那覇とめぐり、2月4日に横浜に戻る旅程だった。1月25日の香港寄港の際、中国系の男性が下船した。この男性は23日から咳が出ていて30日に発熱。2月1日に新型コロナウイルス感染が判明した。

ダ号にはその日のうちに男性の感染が連絡された。ダ号は予定を変更し、3日深夜、横浜港に入港した。しかし接岸せず大黒ふ頭沖に停泊し、検疫に入った。この間、5日早朝まで船内では自由に行動でき、ショーやブッフェなど船内生活は通常通りだった。これが船内で感染が広がった最も大きな要因の一つとみなされている。

同日中に最初のウイルス検査をした273人のうち、31人の結果が判明した。10人が陽性。その後、感染判明が続出し、これまでに712人、死者13人に及んでいる。

アウトブレイク(狭い地域での短時間の感染急拡大、感染爆発)がもはや明らかなダ号への災害派遣命令が、防衛相から自衛隊に出されたのは2月6日。以後、3月1日まで25日間にわたり、陸上・海上・航空の3自衛隊から最多時約190人、延べにして約2700人の隊員が派遣された。任務の内容は、検体採取、医薬品配分、船内消毒、患者搬送、物資搬入などだった。

活動の際、最も重視されたキーワードは「基本に忠実に、徹底的に」。そしてこれこそが現場で活動した厚生労働省の職員らにまで感染者が出たなか、自衛隊員の感染者はゼロだった“秘密”といっていい。同船への災害派遣部隊指揮官を務めた井内裕雅1佐(48)は「一人一人がやるべきことをしっかり実施して、任務を完遂することができた。これまで実施してきたことに間違いはなかったという自信につながる」と振り返る。

具体的に何をしたのか見てみよう。まずは(1)手指の消毒。消毒液を手のひらや甲はもとより、盲点になりがちな指先や指の間、手首にも入念に刷り込む。(2)マスク装着の際には手で鼻の部分を押さえて隙間を作らないようにする。外すときには、本体の表面にはウイルスが付着している可能性があるのでひもの部分だけを持つ。(3)宿泊など隊員の拠点にした借り上げフェリー「はくおう」や「シルバークイーン」の船内では、従事する作業の感染リスクの高低によって隊員の生活動線を完全に分けた。

そして装備による防護の徹底。(4)厚労省の消毒業務は、マスクと手袋、ガウンの使用が基準。しかし自衛隊はより厳重な対応をした。防護服を着用し、手袋は二重にして防護服とのつなぎ目は粘着テープで塞いだ。さらに靴にカバーをかけゴーグルをして目を保護した。(5)2人1組での行動を基本とし、防護服の脱着作業を互いに手助けしたり、隙間がないかの確認などを行った。

(6)防護服を脱ぐにも手順がある。介助者がフード部分を引っ張り、肩まで脱がす。その後、中の衣服に防護服表面が触れることを防ぐために後ろ手で腕を袖から出し、防護服を外側に向かって丸め込んで脱いでいく。最後は靴カバーも一緒に脱いで、感染症廃棄袋に捨てる。ウイルスが付着している外側に触らないようにするためだ。

さらにミスを出さず、しっかりとした活動が続けられるよう、(7)休養と栄養に気を配った。前出のフェリーを宿舎にしたことで睡眠・休養が十分に取れたという。井内1佐は「(フェリーは)活動拠点として非常に素晴らしい環境で、活動が問題なく終了できた大きな要因の一つだった」と評価し、今後の災害派遣の際も「港湾地域で活動する状況下では、隊員の活動拠点として非常に有用だと思う」と太鼓判を押す。

これまではくおうが西日本豪雨で被災者の宿泊・入浴施設として利用されるなどしてきた。加えて日本では、大規模災害の際に港湾を中心に海からの支援活動を展開する場面が多いと予想されるだけに、自衛隊員の活動拠点としての利用を拡大するべきだろう。被災者への支援と同時に、支援する自衛隊員も人間である以上、生活環境を整えることが質が高く長期間の支援活動につながる。

話がそれたが、食事も気になるところ。弁当が中心だったものの、一例を挙げると、白米に主菜の魚介と野菜の炒め物、副菜のメンチカツ、野菜、ワンタンスープ、野菜ジュースという高い栄養価がうかがえる1食があった。

こうしたことを実践するうえで非常に大切なのが、(8)教育だ。自衛隊の優れた点の中でも各種教育については特に注目される。多くの組織では「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」に名を借りた本人任せがまかり通るが、自衛隊を含めた軍隊はプロフェッショナル集団だけに、それでは済まない。新兵から将官に至るまで、いくつもの階層や専門で教育が行われる。軍隊=筋肉集団というイメージは今や間違いだ。

今回の派遣にあたっても「派遣前に教育を徹底した」(井内1佐)という。前述の(1)~(7)などのような具体的なことはもちろん、心構えも重要。井内1佐は「見えない脅威に対して『恐れず、侮らず』を合言葉に感染防護を徹底するため、衛生科隊員による教育と現場指導を確実に実施させた。特に慣れてくると警戒心が低くなることから、結節ごとに何度も繰り返し注意喚起し、現場で直接指導した」と明かす。わずかな心の隙が取り返しのつかない事態を招いた例は、ごまんとある。

こうしてみると、ダ号での自衛隊の対処には“秘密兵器”や“特効薬”があったわけではなく、通常の感染防止策と何ら変わりはない。大事なのは基本に忠実であることと、徹底してやることだと改めて教えてくれた。このことは、この先年単位で続く新型コロナウイルス対策だけでなく、戦争においても、仕事においても、スポーツにおいても、あらゆることに言えることだ。

 

(サンケイスポーツ・梶川浩伸)